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タイ中銀の月例経済金融報告 12月30日の発表より

 11月のタイ経済は10月に比べて成長が上向いた。物品輸出が高い伸びとなったことを受けたもので、これに一致して輸出向け工業の生産、電子部品を初めとする原材料・中間財の輸入額も上向いた。このほか政府消費支出と政府投資支出も引き続き拡大しており、景気の主要な牽引役になっている。しかし観光業は外国人観光客数の減少とタイ人旅行者数の伸びの鈍化による影響を受けた。また民間消費も2か月連続で減速し、民間投資は引き続き収縮している。

 経済安定性に関しては、一般インフレ率は前月から上昇した。生鮮食品と国内燃油小売価格の上昇による。失業率は季節調整済みの前月比で低下した。農業部門の雇用が上向いた。一方、経常収支は黒字基調が続いている。

 11月の景気動向の詳細は次のとおり。

 物品輸出額は前年同月比10・1%増となり、前月の同4・3%減から上向いた。比較ベースとなる前年同月の数値が低いローベース効果、中国による農産物輸入増や単価の大きいブラジル向けの石油探査プラットフォーム輸出といった一時的要因のほか、集積回路(IC)など多くの商品の海外需要が上向き続けていることが寄与している。電機の輸出は米国向けのソーラーパネルの輸出が好調で、中国のメーカーが生産拠点をタイに再配置した効果が出ている。機械・機器の輸出は米国と日本向けのプリンターの輸出が伸びているほか、コンプレッサー部品の中国向け輸出が増加した。このほかに石油価格に連動する製品の輸出価格が上昇するとともに輸出数量も増加した。輸出の好調に従い工業生産も多くの製品で上向いた。

 物品輸入額は前年同月比で2・5%増となった。主に原材料・中間財の輸入が伸びた。燃料の輸入はローベース効果による数量ベースでの増加に加え、原油価格連動で輸入価格も上昇した。金属の輸入は最終鋼板製品の生産増にともない拡大した。電子部品の輸入は、電子製品の輸出増傾向に沿って増え続けている。しかしながら資本財の輸入は依然として収縮している。ハイベース効果によるもので、前年の同月には4G通信網整備のための通信機器の輸入が増えていた。

 交付金を除いた政府支出は、消費と投資の双方で拡大を続け、経済の主要な推進力となっている。予算執行の効率向上措置の効果によるもので、経常的経費は物品・サービス調達費の増加により拡大した。一方、投資的経費は運輸プロジェクトや国道局による土地収用での不動産に対する補償金が増加している。政府収入は主に非税収の減少から収縮した。前月までに石油事業権料の納付が済んでいることが原因。

 外国人観光客数は前年同月比で減少し、季節調整済みの前月比でも減少した。特に中国とマレーシアからの観光客が落ち込んだ。一方、欧州、ロシア、米国からの観光客は引き続き増えている。国内観光も消費支出動向に連動して鈍化した。この結果、民間消費は全体として2か月連続で鈍化した。消費の支援材料はまだしっかりとしたものにはなっていない。非農業部門の家計の購買力は特に商業部門で低下している。農業所得は回復がまだ広く行き届いていない。この月には年度米の収量減によって収縮に転じている。刈り入れ時期が翌月にずれ込んだことが一因。一方で、農産物価格は天然ゴムなどで上昇した。家計の信頼感は農業部門と非農業部門の双方でなお低水準にとどまっている。いずれにしても自動二輪車の販売台数は伸びている。ゴム園農家の購買力の増加とビッグバイク人気が支えている。

 民間投資は全体として幾分改善したが、なお収縮を続け、政府の支援措置を受けている代替エネルギーなど一部の産業にとどまっている。代替エネルギー分野の資本財の輸入は増加し、この業界向けの融資は伸びている。このほかサービス業の投資も物販・飲食業で伸びている。建設投資は上向いた。建材の販売高が伸びている。低層住宅の供給が幾分増加したことが寄与している。

 経済安定性に関しては、一般インフレ率が前月から上昇した。生鮮食品と国内燃油小売価格の上昇による。コアインフレ率はコスト要因の動向に沿って横ばいで、国内需要は緩やかな回復にとどまっている。失業率は季節調整済みの前月比で低下した。農業部門の雇用が上向いた。一方、経常収支は黒字基調が続いている。貿易収支は輸出増にともない黒字が続き、サービス・所得・移転収支も、外国人観光客数は減少したとは言え、観光収入が伸びたことで黒字を続けている。資本収支は純流出となった。外国人投資家による域内の投資のトレンドに一致したタイ株式市場と債券市場での売り越し、商業銀行と海外投資ファンド(FIF)による海外証券投資が理由。ただし外国人直接投資は、タイの通信事業への出資比率の引き上げにより純流入となった。


日付 : 2017年01月09日

By : 週刊タイ経済

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