工場における防火対策
~火災による生産ラインの停止を防ぐために~
工場防火対策では予防の大切なことはいうまでもありません。そのために防火区画の設定や火災感知設備・消火設備による防火システムの充実を図ることが大切であり、避難経路の確保も常に心がけておかなくてはなりません。
こうしたことを基本に、工場における防火のチェック体制を確立しておく必要があります。
工場防火体制のチェックを効率よく行うには「チェックリスト表」をつくり、担当者を決めて日常のチェック体制を確立されることをお奨めします。
工場に潜む火災危険 |
| 塗装ブースの火災危険 |
塗装ブースでは引火しやすいシンナーや塗料を微粒子で吹き付けるため、強力な排気ファンで屋外に排気していても火災危険は高く、出火原因として次のような事例があります。
1. 被塗装物がコンベアから脱落してスパークする。
2. 塗装機を可燃性溶剤で洗浄中に器具が塗装機に接触してスパークする。
3. 塗料を一定温度にするためのヒーターが加熱する。
4. 排気ダクトにたまった塗料カス・ホコリなどに着火する。
| 放電加工機の火災危険 |
放電加工機で作業中は油中で放電を繰り返しますが、放電が油中で行われている限り空気が入らないので着火の危険は少ないといえます。火災危険としては次のような場合が考えられます。
1. 削りカスの蓄積
油槽の中での放電加工が長時間つづくと、ときには電極棒に付着する削りカスが徐々に蓄積されてスパークが起こり、それによって油面に引火することがあります。
2. 液面の低下
長時間の作業によって油が消費され、液面が低下すると放電部分が油面から露出し、スパークによって引火することがあります。
3. ぶっかけ加工
油供給口から油を放出しながら加工する「ぶっかけ加工」は、加工箇所の移動やホースの目詰まりなどにより発生する蒸気に着火することがあります。
| 印刷機の火災危険 |
印刷機は主に紙にインクで印刷しますが、紙である印刷用紙自体が燃えやすく、印刷インクにも引火しやすい油や溶剤が含まれています。印刷版を高速で回転させて紙を移送する輪転機は摩擦熱の発生する危険があり、また、インクを乾燥させるためにヒーターが組み込まれた印刷機もあり、これらの熱によってインクや油などが染み込んだ紙に着火する恐れがあります。
| 混合機・調合機の火災危険 |
小規模の混合・調合作業は一般にバッチ方式が採用されているため、連続方式を採用している大型の混合作業よりも火災危険が大きいと言えます。バッチ方式で引火性の可燃物を取り扱う場合は、取り出し、移し替えなどの際にうっかりミスによる漏洩や溢出などの事故が発生しています。特に塗装工場の規模や形態は千差万別であり、類似の小規模施設では人の手による取り出し、移し替えが頻繁に行われ、装置や容器に危険物のカスがこびりつき、換気や整理整頓などの安全管理を怠ると火災の危険につながります。
| 焼入設備の火災危険 |
焼入れのとき高温の金属面に触れた焼入油は、はじめは沸騰して気化しますが、すぐに冷却します。このとき油の量に比べて材料が少ないときや接触面積が大きいときは引火しませんが、材料が多かったり接触面が少なく熱容量が大きい場合は、気化ガスが発火することがあります。
しかし、発火しても材料が油中に没すれば火は消えます。沸点の高い油は油中に水分があると、高温状態で「Slopping:溢出現象」が生じるので、粘度の調整と水分の管理が重要です。つまり、焼入れ前に油の中に水分を入れないようにすることが大切です。油中の温度が上昇すると水分が沸騰し、油の粘度が高いと沸騰した蒸気が油から外部に抜けにくく、蒸発するときに蒸気が油を吹き飛ばしながら溢れ出て事故につながります。
| 自動ハンダ付装置の火災危険 |
プリント基盤は連続して装置に搬送されてフラックス槽に浸漬し、熱風乾燥後、ハンダ溶融槽に漬けてハンダ付をしてから次の工程でゆっくりと冷却されます。フラックスの液が垂れていたり糸を引いた状態で移送されると、加熱部で着火してフラックス槽やハンダ槽に延焼することがあります。さらにプリント基盤が燃えながらコンベアーで移動すると、火災拡大の恐れがあります。しかし、火災発生箇所が限定されることで素早く対応でき、消火も比較的に容易ですので、再着火する可能性は少ないといえます。
| フライヤーの火災危険 |
揚げ油としては引火性の高い(約350°C)天ぷら油(危険物第4類動植物油)を使用しますが、作業ミスによる異常加熱や作業中に外部からの火種で着火する危険があります。また、ダクトには油かすやホコリが付着しやすく、火種があるとダクト内部に燃え広がる危険が大きくなります。
最適な設置提案をさせていただきますので、お気軽にお問合せください。