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 象形文字のような独特の字体と抑揚のある発音から、タイ語は“習得が難しい”という印象を持たれがちな言語です。しかし、踏み込んでみれば、名詞の複数形がない、動詞が時制で変化しない、名詞に冠詞がつかないなど、日本語や英語と比較してみると、文法自体はかなり平易であることがわかります。

 文字を覚えて読めるようにするには多少時間がかかりますが、日常会話の中で交わされる挨拶をタイ語で話すのはそう難しいことではありません。タイ人の部下や従業員とのコミュニケーションの一環として、タイ語に関する知識を多少なりとも持っておくことをお薦めします。但し、タイ語で指示を出したり、報告を受けたりと、業務の中で使用するには基礎をしっかり踏まえる必要がありますので、タイ語学校などで体系だてて学習されるほうがよいでしょう。

 なお、一般的なタイ人の英語への理解度は日本人のそれとさほど変わりませんし、相手の学歴によってはまったく通じないということも出てきます。また、かつて日本人と一緒に仕事をしたことのあるタイ人であれば、簡単な日本語を理解してくれる場合がありますし、日本人の話すくせのあるタイ語を聞き分けることができるということがあります。

   日常生活で使用する挨拶

【サワッ・ディー】

 挨拶といっても、広い範囲で使われる出会い頭/別れ際の挨拶です。日本語では、挨拶が交わされる時間によって、「おはよう」、「こんにちは」、「こんばんは」、「さようなら」に相当します。加えて、この挨拶は多少改まった間柄、もしくは頻繁に顔を合わさない間柄で交わされる挨拶ですので、両手を胸の前で合わせる合掌(ワーイ)が伴われることが多くなります。また、会社で毎日顔を合わせるような場合には、タイ人は特に挨拶を交わしません。

【コー・トーッ(ト)】

 日本語の「ごめんなさい」、「すみません」に相当します。相手に謝罪の気持ちがある場合には「ごめんなさい/申し訳ありません」、また道を歩いていて体をどけてもらいたい場合などには「すみません」の意味になります。但し、日本人の感覚からいって、タイ人が自分の非を認めてそれについて謝罪するということはごくまれであることを理解しておきましょう。ミスを犯しても何食わぬ顔で仕事を続ける場合も多々あるからです。

【コープ・クン】

 日本語の「ありがとう」に相当します。相手がしてくれたことに対して感謝の意を示すときに使います。これも、前項の「コー・トーッ」と同じく、日本人の感覚で使われるべき場面で、タイ人が使わないというケースが出てきます。例えば、上司のおごりで部下と食事に行くなどというときです。年長者、または収入が多い上司が、部下に食事をおごるというのは当然のこととみなされている場合があるためです。また、レストランのウエイトレス、タクシー運転手、メイドなど、サービス業に従事する人が何かをしてくれた場合、自分の部下が何かをしてくれた場合は、「コープ・クン」ではなく、「コープ・チャイ」と言ったほうがよりネイティブらしくなります。「コープ・クン」は相手との立場が比較的対等な場合に使います。

【マイ・ペン・ライ】

 タイ語を直訳すると、「どうということはない」という意味になりますが、転じて「大丈夫」、「どういたしまして」、「お気使いなく」といった意味になります。前出の「コープ・クン」を受けて言われる場合は「どういたしまして」、何か異常な事態を受けて言われる場合は「大丈夫」に相当します。細かいことを気にしないというタイ人の気質を端的に表した言葉でもあります。

 いずれの場合も、言葉の最後には、男性であれば「カッ(プ)」、女性であれば「カ」をつけましょう。これをつけることで丁寧な表現になるからです。

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