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タイでは1973年以降、地域ごとに日額最低賃金が設定されています。最低賃金は、内閣の任命する政労使の代表 15人の委員で構成される中央賃金委員会の審議によって定められ、その審議は各県の賃金委員会からの意見具申を受けて行なわれます。中央賃金委員会は審議によって最低賃金の改定が決定されたら、労働大臣の認可を経て、内閣の了承を得た後に官報公示し、通常は翌年の1月1日付けで改定されます。 地域別最低賃金の改定はほぼ毎年行なわれており、1973年以降は地域ごとに日額最低賃金が設定されています。2001年までは、全国を3つのゾーンに分けた3段階の賃金体系でした。しかし、2002年以降は、各県の賃金委員会でそれぞれの地域の実状に応じた賃金水準を定めようとする気運が高まり、最低賃金引き上げには各地の物価上昇率が考慮され、全国の平均インフレ率に基づき決定されるようになりました。その結果、県別の最低賃金も改定の度により細分化される傾向にあります。 2006年7月20日、労働、雇用、政府の3者代表からなる労賃委員会は物価上昇を考慮し、急遽8月1日より35県の最低賃金を1~7バーツ/日の引き上げを決めました。バンコクやその周辺県を含む41県については据え置きとなります。なぜ全県に適用しないのかという批判もありますが、選挙を意識した人気取りだ、という意見もあります。7バーツ/日と最も引き上げ幅が大きかったのがラチャブリー県で、プラチンブリー県(工業団地もあって日系企業も結構進出しています)が6バーツ/日、ピサヌローク・カンペーンペット県が4バーツ/日などとなっています。最低賃金アップの理由は、燃料の高騰による生活コストの上昇のためであり、低賃金の労働者を助けるためだとされています。ソムサック労相が 2006年7月21日、バンコクおよび周辺県の首都圏の賃上げが含まれていないことに不満を表明、委員会に再審議を求めましたが、同年8月1日から適用されています。 最低賃金については、2006年5月末にソムサック労相が年内据え置きの方針を示しましたが、インフレの加速に伴う消費者物価の上昇や下院やり直し選挙といった経済、政治要因から、引き上げ機運が高まってきていました。その結果、タイ財務省が法定最低賃金の引き上げを検討し始め、2006年7月半ばに開かれた労働、雇用、政府の3者労賃委員会に、バンコク、ノンタブリーなど首都圏6県について 10バーツ増の194バーツ(それまでは<現在も>1日184バーツ)を提案していました。 今回の法定最低賃金の引き上げは、前回2006年1月1日発効の法定最低賃金の改定からわずか7ヶ月後の再改定となります。度重なる法定最低賃金の引き上げに、もともと給与水準が法定最低賃金より高めの日系企業はともかく、中国の製造業との競争を強いられている、一部のタイローカルの中小メーカーの中には影響を受けるところも出てきているようです。賃金委員会が設定する最低賃金の基準は日系企業の人件費に影響を与えます。 長期的には、人件費の水準が外国企業が投資を決定する際の重要検討事項の1つである以上、タイ政府は今後も賃金政策に関して相当の配慮を払うのではないでしょうか。 2006年8月1日から適用されている各県別最低賃金の概要は下記の通りです。 ・2006年7月20日に決まった賃上げは、▽ラチャブリー県147バーツ→154バーツ▽プラチンブリー県147バーツ →152バーツ▽ピッサヌローク県、カムペンペット県143バーツ→147バーツ▽コンケン県、ブリラム県、カラシン県144バーツ→147バーツ▽ナコンラチャシマー県158バーツ→161バーツ▽アユタヤ県155バーツ→158バーツ▽ロッブリー県151バーツ→154バーツ▽プラジュアブキリカン県 147バーツ→150バーツ▽ペッブリー県150バーツ→153バーツ▽プーケット県181バーツ→184バーツ▽ラヨン県155バーツ→157バーツなど。 ・ 7バーツ/日と最も引き上げ幅が大きかったのがラチャブリー県で、プラチンブリー県(工業団地もあって日系企業も結構進出しています)が6バーツ/日、ピサヌローク・カンペーンペット県が4バーツ/日などとなっています。 2006年8月1日から適用されている各県別最低賃金の概要 (バーツ/1日8時間)
この最低賃金は1998年労働者保護法79条に基づき賃金委員会が定めるもので、今回の決定に基づき2005年12月2日付労働福祉省告示で公布されたものである。同法90条により使用者は最低賃金を下回る賃金を労働者に支払ってはならない。 |