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タイの外資政策 タイの経済発展において外貨が果たした役割は大きく、外貨政策は経済・産業政策の重要な柱となってきた。1954 年には産業奨励法が制定され、それに基づいて Board Of Investment(投資委員会、以降 BOI)が設置された。現在は 1977 年に改正された投資奨励法(1991 年、2001 年改正)の下、BOI はタイ経済の発展に寄与する投資案件に対し、奨励適格事業の審査、恩典の付与を与える権限を有すると共に、内外投資家に対する投資情報提供を行なっている。BOI が外貨の積極的な導入に果たした役割は大きい。 一方で、1972 年に公布された外国人事業法(1999 年改正)は、外資が 50%以上を占める企業に規制を加える法律である。これにより、特別の理由により外国人が従事できない事業(9事業)、国歌の安全、文化的な影響、伝統、工芸品、自然環境に関する産業のため従事できない事業(13事業)、外国人に対してタイ人が充分な競争力を有していない産業のために従事できない事業(21事業)が定められ、タイ企業の市場の優位性を確保している。なお、一般の製造業はこの規制から外されている。 タイの市場の有望性 国際協力銀行( JBIC )が 2002 年7月に実施した海外直接投資アンケート調査によると、中長期的(今後3年程度)有望事業展開先国として、2000 年度、2001 年度と3位に位置付けていたタイが、2002 年度は米国を抜いて2位に順位を上げている。これはタイが市場の成長性、安価な労働力のみならず、組み立てメーカーへの供給拠点、第3国輸出拠点として有望と見られていることが背景となっている。なお、トップは3年連続で中国が独走している。 しかしながら、タイの投資環境を中国と比較してみると、全14項目のうち9項目において、タイの方が「優れている」と評価されており、中国が有望視されつつも、多くの面でタイ市場の優位性を感じさせるものである。
(中国を“0”としたときの投資環境。プラスは優れている、マイナスは劣っている。) 最近の外貨政策と規制緩和の動き 自動車関連産業の集積速度を速め、自動車産業を支えるサポーティングインダストリーを一層強固にして、タイをアジアにおける自動車及び自動車部品産業の生産拠点とし、また競争力強化を目指すため、BOI は 2002年1月に自動車産業の立地に関する規制緩和を発表した。同年9月には、約10年にも渡って投資政策の根幹を成していたゾーン制の見直しを発表。そもそもゾーン制は、地方振興と環境対策を目的に、業種ごとに立地可能なゾーンを規定して、ゾーンごとに法人税免税等恩典に格差を設置することで、地方への投資、移転を促進するものだったが、規制緩和により一部業種を除いて立地先を自由に選べるようになった。これによって企業は、それぞれの戦略に従って立地場所を自由に選定することができるため、競争力強化につながるとしている。これ以降、ゾーン制による差異は、法人税をはじめとする恩典年数等の厚さのみとなった。 これらの規制緩和は、中国へ投資が集中していることへ対する危機感の現われとも言える。今後、自国の競争力強化に向けて、各種規制が緩和の方向へ向かっていくことは確実であろう。
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