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(1)事前調査 タイにおいて工場を設立する場合、事前調査(フィージビリティー・スタディー)を行う必要があります。ここでは、一般的な事前調査のやり方を紹介します。 ■立地に関する調査 当事者にとって最も有利と思われる地域を選択できるよう入念な調査を行います。タイ進出後、国内で商取引が期待できる顧客たる会社および事業所の立地条件や、原材料購入の際により有利と思われる場所、あるいは出荷・輸出を行う場合に有利と思われる地域、さらにはBOI(投資委員会)への奨励申請を可能とするかどうかといった視点からの立地条件について、総合的に検討する必要があります。各企業によってその必要とされる条件は様々ですが、進出当事者にとって最も有利と思われる地域を選択できるよう入念な調査が必要でしょう。 もっとも重要なポイントのひとつは、どこの工業団地に工場を設立するか、というロケーションの問題です。いくつかの条件を考慮したうえで、御社の工場に最適な工業団地を選ばなければなりません。まず、御社の製品とその原料について考えてみる必要があります。原料はどこから仕入れ、製品はどこへ送るのか。また、原料と製品ではどちらの方が重いのか。原料のほうが製品よりも重ければ工場は原料の仕入先の近くに、その逆の場合は製品の送り先に近いほうがいいでしょう。また、輸出用製品の場合は航空便で送るのか、船便で送るのかもロケーション選びの重要なポイントです。例えば、製品が高価、かつ軽い空輸向きのものでしたら空港へのアクセスが良い地区の工業団地、船便を利用されるならレムチャバン港に近い東部海岸地区の工業団地、というように輸送の方法によって適する工業団地も変わってきます。もちろん、必要な労働力を確保できる場所を選ぶ事も大切です。しかし、レベルの高い技術者を除けば、タイでの労働力の確保は近隣諸国に比べそれほど難しいことではないでしょう。 ■事業用地の取得に関する調査 土地の取得を行うかどうか、取得する場合は取得可能な条件を満たすことができるかどうか、の検討を行います。事業を行うために必要な用地を取得するかどうかの検討を行い、取得を希望するのであれば、取得可能な条件を満たすことができるかどうかの検討を行わねばなりません。 外国資本マジョリティーの製造業の場合、BOI(投資委員会)の奨励を取得しその特典に基づく許可を得て取得する方法、外国人の土地所有を認めている工業団地公社(IEAT)管轄の工業団地内の土地を取得する方法、以上2つが一般的です。逆に言うと、工業団地公社(IEAT)管轄の工業団地内への進出を決定すれば、BOI(投資委員会)の奨励が得られなくとも土地所有が可能ですが、工業団地公社(IEAT)管轄以外の工業団地への進出を希望するのであれば、BOI(投資委員会)の奨励を得られなければ土地の所有は認められないと言えます。また、外国資本の会社ではない場合でも、外国人または外国資本が所有する株式が40%以上の会社が土地を所有する場合には、土地局長官の承認が必要となります。会社を設立するにあたって、土地を購入・所有するかどうか、購入するとすればどのような場所を選定するかによって、会社の株主構成に影響が及ぶことになりますので注意が必要です。 ■BOIの投資奨励またはIEATの特典を得られる可能性に関する調査 BOI(投資委員会)または工業団地公社(IEAT)の特典が得られる事業かどうかについて検討します。タイ政府は内閣総理大臣を委員長とする投資委員会(BOI)を設け、BOIが奨励するに値する事業規模、雇用促進、技術移転、外貨獲得等の能力がある新規事業については、投資奨励をおこない特典を付与しています。また、タイ工業省所管の工業団地公社(IEAT)は、IEATが特に認める新規事業を、IEAT管轄の工業団地内でおこなう場合、独自に特典を与えています。 【Industrial Estate / Zone / Park】 御社の工場を工業団地公社(IEAT:Industrial Estate Authority of Thailand)によって開発、あるいはIEATと民間企業によって共同開発された“Industrial Estate”と呼ばれる工業団地に置くのか、民間によって開発された“Industrial Zone”または“Industrial Park”と呼ばれる工業団地に置くのか、工業団地以外の場所に置くのか、ということも考えるべきポイントのひとつとなります。 もしも御社の事業がBOIの奨励を受けるつもりならば、“Industrial Estate”、あるいはBOIの奨励を受けた“Industrial Zone”に工場を設置する必要があります。御社が外国資本51%以上の法人としてタイで事業を展開する場合、IEATの定める“Industrial Estate”内に土地を購入することができます。また、BOIの奨励を受けた場合、外国資本の比率に関係なく土地を購入する事が可能になります。 IEATの定める“Industrial Estate”、または民間による“Industrial Park”、“Industrial Zone”以外の場所への工場の設立は、複雑な問題が多いので避けたほうが無難でしょう。ほかに、製造過程で有害廃棄物が発生する場合や大量の水を使用する場合もロケーション選びを慎重に行う必要があります。 【購入か?賃貸か?】 製品の製造過程で特別な機械や施設を要する場合、工場用地を購入し十分な施設を備えた自社工場を建設する必要があります。しかし、標準的工場に少し手直しを加えたレベルの工場をお探しなら、御社の希望する期間内の契約でリースできる物件を見つけることも可能です。 【BOI投資区分】 御社がBOI(タイ投資委員会)の租税恩典を受けようとお考えなら、工場の建設候補地はさらに絞られてきます。御社の業種にもよりますが、BOIは工場の立地によって租税恩典のレベル分けをしているので、その点も考慮して工場の設立地を考える必要があります。 【一般工業区か?輸出加工区か?】 御社の製品のほとんどが輸出用なら、工場は工業団地のなかにある輸出加工区(EPZ)に置くとよいでしょう。逆に輸出品が占める割合がそんなに大きくない場合、一般工業区(GIZ)が適切な選択だと言えるでしょう。 (2)認可の手続きについて 上記事項にコスト等、いくつかの条件を照らし合わせて考えれば、おのずと候補地は絞られてきます。候補地が決まったら土地の使用権および工場所有権の獲得はもちろん、輸入税控除やワークパーミット(外国人就労許可)取得のための準備をすることも必要です。IEAでは、これらの手続きを容易にすすめることができるようお手伝いする“ワンストップサービスセンター”という機関が設けられています。ここを利用すれば、各企業は更に充実した投資サービスを受けることができます。 (3)工場建物建築開始 会社設立登記終了後、工業省に対し工場免許に関する許可申請を行いますが、(1)事業所 IEAT(工業団地公社)が管轄する工業団地に立地する、(2)IEAT管轄外の工業団地に立地する、(3)工業団地外の私有地に立地する、それぞれのケースにより手続きは若干異なります。また、いわゆる貸し工場の内装や改良の工事を行う場合でも、その規模や内容によって許可申請の対象とされますので注意が必要です。 事業所がIEAT管轄の工業団地に立地する場合、工場設置許可申請はIEAT事務局を通じて行うことができます。一方、IEAT管轄外の工業団地や工業団地外の私有地に立地する場合は、BOIの奨励の有無にかかわらず工業省本局または各県に置かれた工業省支局に対し許可申請を行います。工場設置許可申請では、会社登記証書、土地売買契約書、機械リストおよび配置図、建築設計図等が必要となります。 工場設置完了後30日以内に、工場操業許可申請を行わねばなりません。この許可申請の場合も、IEAT管轄の工業団地に立地するケースではIEAT事務局を通じて、一方、IEAT管轄外の工業団地や工業団地外の私有地に立地する場合は、BOI の奨励の有無にかかわらず工業省本局または各県に置かれた工業省支局に対し許可申請を行います。工場操業許可申請は、工場設置許可証に記載された仕様と実際のそれが合致することが要求されます。 その他、内務省土木局に対し工場建築確認申請を行い許可を得る必要もありますし、BOIや IEATに対して工場操業開始許可申請も行う必要があります。なお、後者の手続きは一部の投資奨励特典や恩典の起算日とも関係しますので注意が必要です。
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