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タイ国で工業団地が設立されたのは、1967年バンコク郊外のバンチャン工業団地であり、工業省が所管していたが、国内に工業団地を造成し、総合的に管理させる機関として1972年にタイ国工業団地公社(Industrial Estate Authority of Thailand : IEAT)が設立された。このIEATの目的、業務を定めているのが1979年タイ国工業団地公社法であり、1991年と1996年に計2回改正されている。 タイの工業団地は2種類ある。1つはIEATが管理する工業団地で、IEAT自身が造成したもの、民間が造成・販売しIEATがその管理を行うものがある。もう1つは、民間がBOIの投資奨励を受けて造成・販売・管理も行うものである。BOI の恩典が付与される工業団地とは、この2種類の工業団地を指す。IEAT管理の工業団地は、1979年タイ国工業団地公社法40条により Industrial Estateと称する。一方、IEAT管理でない工業団地はIndustrial Estateの名称を使用することが禁じられているため、Industrial Parkなどの名称を使用している。BOIの案内等で、日本語で「工業団地」と称するのがIEAT管理の工業団地であり、「奨励を受けた工業地域」と称するのがそれ以外の工業団地である。 現在、タイ全土に広がっている団地はほとんどがIEAT管理の「工業団地」であり、その管理を行うIEATの基本法となるのが、1979年タイ国工業団地公社法である。この法律により、建築基準法、工場法による許可はIEAT総裁に権限が委譲されているほか、輸出加工区における輸入税などの免税規準が定められている。 以下、1979年タイ国工業団地公社法の概要を説明していく。 1.IEATの目的、性格(6条) 工業団地を造成し、団地内のインフラを整え、団地内の土地を販売・賃貸すること、団地の造成運営について民間と共同することなどが挙げられている。IEATが管理する団地はほとんど民間が造成販売、IEATが運営管理する方式のものである。 IEATは法人であり、資本は国家予算などで出資されている。 2.IEATの委員会および総裁 重要事項は委員会により決定されるが、委員長および委員は内閣で選任され、IEAT総裁も委員となる(18条)。委員会の責任と権限は土地造成、販売、賃貸価格、団地への入居、管理など、IEAT業務の規則のほか、内部の人事、給与などを含む規則を作ることであり(23条)、必要な場合は小委員会を設置することができる(24条)。また、総裁は内閣の了承により委員会が選任することになっている(25条)。総裁は委員会の方針、規則によりIEAT事務局の統括を行い(28条)、第三者に対してはIEATを代表する(30条)。 3.団地の種類とその設置 一般地区(General Industrial Zone : GIZ)と輸出加工区(Export Processing Zone :EPZ)の2種類があり、GIZ、EPZの設置は勅令により決定、官報で公布され(36条)、規則は省令で決定される(37条)。必要な場合、IEAT は勅令の定めにより土地収用法を適用することができる(38条)。 4.団地への入居と各種許可、特典 (1)入居申請許可
工業団地内で事業を行う者は、総裁または総裁から権限委譲された者の許可を受けなければならないが、その規則は委員会が定める(41条)。BOIの投資奨励が委員会(大型案件の場合は首相を委員長とする委員会、小規模の場合は小委員会)で認可されるのと異なることに注意。また、入居申請の認可については、 BOIと多少異なり、団地のインフラ需要、公害の有無、対策に重点がおかれている。BOIの場合、認可された事業については恩典と条件を記載した「奨励証書」が発給される。一方、IEATの場合、入居者とIEATの間で、入居者が団地の規則を守る旨を主とする内容の契約書を締結することになっている。
(2)工場設立、操業許可、建築許可、外国人就労許可、外国人の土地所有許可
[工業団地内の建物建築、工場建築については工場法、建築基準法、都市計画法に従うものと規定されているが、その許可権限は総裁または総裁から権限を委譲された者が行う(42条)。つまり、IEATに許可の権限が委譲されている。また、工業団地内で働く外国人専門家とその家族の入国、就労も認められている(45、46条)。以上の手続きはIEATで一括申請できるので「ワンストップサービスセンター」と称されている。また、土地法では外国人の資本が49%を越える場合、原則として土地の所有はできないことになっているが、工業団地の場合、外資100%の場合でも土地法に基づく土地所有の許可が得られることになっている。-]
(3)外貨送金
[タイ国内へ送金した資本金、借入金、その他の資金は、国外へ送金することが許可される(47条)。-]
(4)EPZの恩典
[上記(2)の恩典に加え、製造用原材料、機械設備、道具、工場、建物建設資材の輸入税、付加価値税、物品税などが免税となり(48条)、EPZから他の EPZへ移出するときも同様である(49条)。ただし、国内へ移出する場合は、移出物品の形態により移出時の税率により輸入税、付加価値税、物品税などが課せられる(51条)。EPZへの物品移入、移出は、すべて総裁または総裁が権限委譲した者の許可を要する(56条)。-]
5.IEAT職員の権限 営業時間内にいつでも団地内の事業所に立ち入り、入居条件、規則を守っているか検査することができる(57条)。 6.内閣とIEAT 以下の場合、IEATは内閣の了解を得なければならない(66条)。 ・ 工業団地の設立、拡張
・ 資産再評価による増資
・ 減資
・ 1千万バーツ以上の資金借入
・ 債券などの発行
・ 1億バーツ以上の資産の売却
その他、投資については内閣の了承が必要で、事業予算は内閣に報告しなければならない(67条)。会計については、毎年会計検査院の監査を受けなければならない(69条)。 7.BOIの奨励との関係 IEATの特典でBOIの特典と異なる点は、輸出加工区における輸入資材の各種租税の免税がある点(BOIの場合、輸出製品用原材料の輸入税免税措置が期限付きである)、および建築、工場設立など、他省庁の権限に属する許認可が、IEATに委譲されている点である。一方、BOIでは法人所得税の減免税も特典がある(ただし、地域により異なる)が、IEATにはその特典がない。したがって、 IEAT管理の工業団地へ入居してIEATの特典を享受すると同時に、法人所得税減免税の特典(BOIの特典)も受けたいのならば、IEATへの入居申請と併せてBOIの投資奨励も申請しなければならない。 |