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(1) 概要、および投資奨励前や非BOI奨励事業の外国人の入国、就労許可のための手続き 日本人がタイ国に外国人として入国したり、タイ国内で労働をしたりする場合、多くの企業は手続きを代行業者任せにしており、我々自身が外国人として、タイに入国したり、就労許可をもらうための手続きをよく知らないままでいることが多い。しかし、無知であるばかりに、本人の自覚が無いまま違法行為を犯していたりする場合もあるので、外国人として特にタイ国に長期滞在する場合は、やはり概要くらいは知っておきたい。 【1.査証】 入国法第12条(1)により、「査証を必要としないものとして特定される外国人を除き、有効な旅券または旅券代替証書(旅券/パスポート等)および査証を持たない外国人の入国は禁止される」として、入国時には基本的に査証(ビザ)が必要とされている。 査証に関する2002年省令第2条によると、査証の種類は以下の通りである。 (1) 外交官
(2) 公務
(3) 短期滞在者(以下「Non-Immigrant VISA」という)※
(4) 観光
(5) 通過(トランジット)
(6) 「入国法」第41条による永住
(7) 永住許可数の規定を受けない永住のための入国
(8) 親善
※ (3)にある「Non-Immigrant VISA」は、同省令第5条の規定に基づき、以下の10の区分に別れる。括弧内の表記は、実際に発給される場合の表記である。 1) 公務(Non-Immigrant F)
2) 商用(Non-Immigrant B)
3) 関連する省、庁、局が認可する投資(Non-Immigrant IM)
4) 投資奨励法にもとづく投資等(Non-Immigrant IB)
5) 教育または催事(Non-Immigrant ED)
6) 報道(Non-Immigrant M)
7) 関係する省庁局の認可を受けた布教(Non-Immigrant R)
8) 研究機関もしくは研修機関における研究または研修(Non-Immigrant RS)
9) 技術者または専門職による業務(Non-Immigrant EX)
10) 「査証に関する2002年省令」第14条に定めるその他のもの(Non-Immigrant O)
ただし、観光で入国する場合、日本人は査証(ビザ)無しで入国でき、30日の滞在許可をもらえるが、これは同省令第13条3項と、それに基づく2002年10月1日付 内務省布告「観光目的の査証免除により30日間を超えない期間短期入国が可能となる旅券等を有する者の国名を指定する件」に基づくものである。日本を含めて38カ国が対象となっている。 【2.外国人がタイ国で就労する場合】 タイではNon-immigrant B等のビザで入国しても、別途外国人就労許可(Work Permit)を取得しないと一切の労働ができないことになっている。 投資奨励法の第24条に基づいて、外国人が投資可能性を研究するために、または投資業務に有益な活動を行うために、投資委員会は外国人の技術者・専門家がタイへ入国して就労許可を取得するための支援を行う。申請窓口はBOIの外国人専門家サービスユニット(Foreign Expert Services Unit)である。 なお、BOI認可事業、タイ国工業団地公社(IEAT)管理の工業団地へ入居する事業に対する外国人就労許可に比べて、それ以外の外国人就労許可の取得はより厳しい条件とより多くの書類を必要とするので注意されたい。 外国人がタイ国で就労する場合の一連の流れ
(1) まず大使館もしくは領事館で査証を取得する。
(2) 入国審査手続きで、入国許可(Entry permit)+ 滞在許可(Non-immigrant "B" ビザの場合は90日)をもらう。
(3) 労働許可証(Work Permit)の手続きを行う。
(4) 入国管理局(Immigration)で滞在の延長(滞留許可 / Extension of Permit to Stay)をもらう。
(5) 労働許可証(Work Permit)が発行される。
(6) 再度滞在の延長(滞留許可)をもらう。
(7) この滞留許可は、国外に出ると失効してしまうため、有効期間内に再びタイ国に戻ってくる場合には、査証ではなく「再入国許可(Re-Entry Permit)」を取得する必要がある。
(8) 再入国許可(Re-Entry Permit)を使用して、再度タイ国に入国する場合には、出国前に有効であった滞留許可の期間までの滞在が認められる。
以上のような流れで、滞留許可(+労働許可証)が発出され、長期滞在(最長1年間の滞在の繰り返し)ができるようになる。 【3.審査】 滞留許可発出のための審査基準については、すべてが公表されている訳ではないが「1998 年1月27日付 入国審査局命令 第10/2541号 主権領域に滞留申請をする外国人対応の件」第3条には、雇用者はタイ人と外国人の雇用割合として最低でも4:1を守ることを求めている。その他にも「入国審査局命令 第110/2546号 外国人の短期の滞留申請審査に係る原則および要件」には、外国人の最低月給が定められており、日・米・カナダ人ならば60,000バーツ、欧州・豪州人は50,000バーツ以上の給与(福利厚生の費用を含む)が支払われることが条件として定められている。労働許可証(Work Permit)発給のための審査基準に関しては、別途「2004年9月30日付 2004年外国人就労許可審査の原則に関する労働局規則」で定められている。 【4.再入国許可】 入国法第39条により「滞留許可を取得した外国人がタイ国の主権領域から出国したときには、当該滞留許可は失効したものとみなされる」ために、滞留許可を取得した外国人が海外に一時出国する場合には、出国前に、入国審査局の職員から再入国許可を得る必要がある。これにより、再びタイ国に入国した後、滞留が許可されている残存する期間中も滞留することができるようになる。 また、外国人就労法第13条第2項の規定により「Non-Immigrant VISA」により入国した外国人の就労許可証の有効期限は、入国法により許可された滞在期間または滞留期間を超えないもの、とされている。そのため、仮に、滞留許可を受けた後、出国前の再入国手続きを忘れて、タイ国を出国してしまった場合、タイ帰国時にノービザ扱いと、従来とは別の資格で再入国したことになり、滞留許可と一緒に就労許可証(Work Permit)も失効してしまう。その場合、新たに就労許可証を再度申請するしかない。そのため、日本に一時帰国する際などは、事前に、会社や代行業者が再入国許可(Re-Entry permit)を取ってくれているか、確認しておいたほうが無難だ。 【5.よく見られる違法行為】 Non-Immigrant Bビザ(ビジネスビザ、就労ビザ)を取得すれば、タイ国で就労することが可能だと思っている人がいまだに時々いるが、外国人(タイ人と婚姻関係にある者も含む)が労働許可証(Work Permit)を取得しないで就労することは違法となるので注意されたい。また、タイ国における「就労」とは、給与支払いの有無に関係がないので、ボランティアやインターン等として、たとえ無給で働く場合であっても就労として扱われる。 外国人就労法第5条の定義 Non-Immigrant Bのマルチビザを取得して、3か月毎に海外に出ると、タイに滞在することができる。そのことを利用して、小規模な会社では労働許可証を取得しないまま、現地で労働を行わせることが以前は盛んに行われていた。そのため、近年は入国管理局、労働局が警察と協力して摘発を行っている。また、近年、マレーシア、ラオス、シンガポール等、タイの近隣諸国だけではなく、日本においてもNon-Immigrant Bビザの発給が非常に厳しくなってきている。Non-Immigrant Bビザ発給のためには、外国人就労法第8条に基づく、雇用者による労働許可証の事前代理申請が要求される場合も多い。 |